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ハノエ―四ッ谷探偵事務所奇譚―

ここは東京――新宿。 賑やかな中心街から少し離れたビルの2階。 『四ッ谷探偵事務所』に係る、異能を持った人間達の物語。

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邂逅4



赤と白のボーダーのマフラーは、やたらと視界に映えて存在を主張していた。周りの奴らが真っ黒だからだろうか、彼女の存在が浮いて見えた。マフラークンが呟いた「沙夜」というのが恐らく彼女だろう。この子が、クラスの全員を解放させて自ら人質になった子。







「・・・沙夜を離せ」





それは低く、地を這うような声だった。


爆発で割れた窓から入る風で、はたはたと彼のマフラーがなびく。人質にされている彼女のボーダーマフラーも、なびいていた。何故かその光景を見て、この二人がキョウダイのような、カゾクのような、そんな「繋がり」の印象を受けた。





一歩、マフラークンが彼らに近づく。





「来るな!コイツがどうなってもいいのか?」


「月音!」




ツキネ、と。初めて耳にする名前を聞いた。状況から考えてまず間違いなくマフラークンの名前なのだろう。沙夜クンの髪を掴んでいた男が脅しをかける。しかしそのまま歩を進めるマフラークン、そんな彼を制止させたのは彼女の一言だった。更に、拘束から抜け出そうと沙夜クンがもがく。ぴん、と張った髪の毛が痛そうだ。・・・何でこんなに自分が傍観しているかというと、彼――マフラークンの様子が、やはりおかしい。そう感じたからだ。




先程より顔色が悪い。
ゆっくりと一歩進むごとに、微妙にだが、顔をしかめる。まるで何かの痛みに耐えているかのように。



そして、一番不可解なことは。



――この異常な状況に、慣れすぎているということだった。





普通の高校生の反応ではない。
明らかにこの学校の生徒ではない銀髪クン(教室の入口でぼんやりとこの状況を眺めている)ならまだわかるが、こんな、巻き込まれただけの少年の反応にしては落ち着きすぎている。




「・・・、」




わからないことが多すぎる。
状況整理が出来ない以上、派手に動き回るのは得策ではなかった。







「クソっ、この女!動くな!」


「きゃっ」






もがく沙夜クンを黙らせる為か、黒服の一人が髪を引っ張るのをやめて首元のマフラーをぐい、と引き寄せた。余程強く引っ張ったのだろう、ぶちり、とマフラーの毛糸が千切れる音がした。







「―――!」






瞬間、彼女の瞳が大きく揺れて。





バチッ、そんな音と共に視界が黄色の閃光に染まった。立て続けに、ズドンという鈍い音。何だ、何が起こった。







漸く閃光が収まり、目を開けると。









「汚い手で触んな、クズが」










教室の床にめり込む様に倒れこむ先程の黒服と、ゴミでも見るかのような目でそいつを見下す沙夜クンがいた。






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